鳥居 強右衛門 ⑧
磔の柱に縛り付けられた強右衛門は
しばらくすると、やおら目を見開いて、
城の方を見ました。
遠目に仲間の顔が見えます。
彼はその一人一人の顔を確かめると、
目の前の城に向かって大声で叫びました。
「みなの衆――。援軍はすぐにやって
きますぞ。今しばらく持ちこたえてくだされ」と。
その言葉が終るか終らないうちに、彼の体は
下から突き出した武田兵の槍の先で刺されて
いました。
捕らえられた時から、強右衛門は死を覚悟して
いたのでした。
武田軍の命令に従うと見せて、これを、味方
をはげます最後のチャンスとして、この朗報を
命をかけて伝えたのです。
つづく
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