黒田 官兵衛 3
信長が、荒木村重の造反を、
にわかに信じ切れなかったのは・・・
これほどの厚遇を持って遇し、
村重に何の不満があろうか・・・
ということだったのでしょう。
信長は、村重に摂津の国を与え、
こよなく村重の剛勇を愛したのでした。
村重が始めて信長に、謁見したとき、
信長は脇差を抜いて、目の前に置いていた、
だんごを刺して「これを食べてみよ」
といったと言うのです。
居流れる諸将は、さてどうしたものかと、
固唾を呑んだのです。
ところが、村重は、「いただきまする」
と言って、切っ先に刺さった、
だんごにぱっくりと噛み付いて、
食べてしまったのです。
これを見た信長は、カラカラと笑って、
以後、この村重を重用するようになるのです。
信長には、もともと、
このような稚気にとんだ奇癖を愛する風があり、
村重はまさにこの信長の性向にぴったりと
反応する人物だったのです。
それだからこそ・・・
後世になった今も、村重謀反の真意を明察することはできません。
明智光秀にはどこか、
あまりに慇懃実直という趣があり、
この点は信長とは相容れないところがあったのでしょう。
この2人にいつか、不協音が生じるということは、
容易に推測できます。
しかし、村重とは、少なくとも信長の側には、
何の齟齬もありえなかったのです。
だからこそ・・・普段、峻烈きわまりない信長も、
このときばかりは、「いかにしたものか」
と思案にくれたのです。
この状況では力攻めは“効なし”として、
説得するということに決定します。
ということで、黒田官兵衛が有岡城に向かいます。
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