黒田 官兵衛 5

剛先生

2012年11月07日 11:29

「松千代を殺せ」といわれて、

秀吉の心は千々に乱れます。

その思考は同じ道を行ったりきたりして、

一向に結論にたどり着く気配はありません。

主君の命にそって、松千代を殺すべきなのか

・・・それとも、官兵衛を信じて、

この子をかばい尽くすのか・・・

秀吉は心底、官兵衛を信じていましたから、

「裏切るはずがない」という確信はありました。

しかし、君命に違背した場合、

自分一身の死はもちろんのこと、

その累が一族にも及ぶことも・・・

秀吉の苦渋を深める一因でもあったのでしょう。

長い沈思の後・・・ついに秀吉は「一身を賭しても、

この子の命を救おう」と決断したのです。

すぐさま、竹中半兵衛に相談します。

半兵衛もまた、官兵衛の人品を高く評価していましたから、

「我が身命に変えてお守り通す」というのです。

この場面が、太閤記の中で、

私がもっとも好きな部分です。

官兵衛という人物は、何と幸運だったのかと

・・・感嘆せずにはいられません。

いや、自己の人品が高かったからこそ、

秀吉も、半兵衛も「この人には、

命さえかけても悔いはない」

といった心情にさせたのでしょう。

あなたに・・・あなたのために命をなげうってもいい

と思ってくれる人がいますか・・・

この話を、いつもクラスでするとき、

それまでざわめいていたクラスが、

この話に来たとき、一瞬に静止すのです。






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