ランの話 ⑧ プリーズ、キルミー
ある時、ランと、日本車と欧州車のどちらが
優れているかという話になって、当然私たちは、日本車に
肩入れして話していました。議論が白熱してくると
、英語ではうまく説明できず、わたしが「日本語なら
もっと言いたいことがあるのだけど」と言って、
むくれて話を打ち切ってしまったことがありました。
ランが、急に台所に行って、包丁を持ち出して
私に渡して言ったのです「由紀子さん、プリーズ、キルミー」
(どうぞ、私をころして)と。
初め、何を言っているのだろうと思い、ランの顔を見て、
思わず噴きだしてしまいました。
感情的になった私を見て、彼はユーモアで
その場の雰囲気を変えようとしたのでした。
彼は議論をたのしんでいただけだったのです。
日本人は、議論することになれていないせいで、
相手と意見が違うと感情的になりやすく、
お互いに、とことん話をして、その結果起きる
気まずさを避けようとします。
日本人にとって、議論は楽しむものではなく、
できれば言葉を濁してでも、丸く治めようとします。
私もそうでした。
そんな私に、ランは議論は冷静に楽しむものだ言うことを
ユーモアを交えて教えてくれたのでした。
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